スペイン語文芸誌『スール』 1931-1992年
本コレクションは南米を代表する文芸誌『スール』の創刊号から最終号までの記事を収録するものです。
スール』は1931年、アルゼンチンのブエノス・アイレスで創刊されました。創刊者はビクトリア・オカンポ。ブエノス・アイレス屈指の名家に生まれ、幼少の頃からフランス語や英語で教育を受け、パリなどヨーロッパ各地に遊学し、ヴァージニア・ウルフ、アンドレ・ジード、ロジェ・カイヨワ、オルテガ・イ・ガセットら、ヨーロッパの作家や知識人との交友関係を築いたコスモポリタンな知識人です。オカンポは、これらの作家や知識人との交流を深める中で、ブエノス・アイレスで文芸雑誌を創刊することを思い立ちます。モデルになったのは『ヌーヴェル・ルヴュ・フランセーズ(新フランス評論)』、アンドレ・ジードらが関わったフランスの文芸雑誌です。『スール』は、『ヌーヴェル・ルヴュ・フランセーズ』のような雑誌を南米でも作ろうとの構想の下に創刊されました。オカンポは、『ヌーヴェル・ルヴュ・フランセーズ』の他にも、オルテガが創刊したスペインの雑誌『レビスタ・デ・オクシデンテ』、T.S.エリオットが創刊したイギリスの雑誌『クライテリオン』などの同時代のヨーロッパの文芸雑誌を通じても人脈を築きました。オカンポの人脈をベースに、『スール』はヨーロッパや北米の文学を南米に紹介するとともに、アルゼンチンをはじめとする南米の作家が作品を発表する媒体としての役割を果たしました。中でもホルヘ・ルイス・ボルヘスと『スール』の関わりは深く、ボルヘスは後に『伝奇集』に収められる短編を初めとする作品を『スール』に発表したほか、外国文学を紹介する編集者としても抜群の能力を発揮しました。『スール』は、南米初のノーベル文学賞受賞作家であるチリのガブリエラ・ミストラルら、アルゼンチン内外の多くの作家に創作の舞台を提供し、20世紀後半に開花するラテンアメリカ文学の黄金時代を演出しました。『スール』が提供した話題は文学に止まらず、哲学、思想、音楽、絵画、建築など、人文・芸術全般におよびました。南米の文芸雑誌であるとともに、刊行時期がほぼ重なるイギリスの『リスナー』ととともに、知識人の時代である20世紀を読み解く手がかりを与える雑誌でもあります。
『スール』は1971年まで定期的に(月刊もしくは隔月刊)刊行されましたが、それ以後は刊行が不定期になり、1992年に60年の歴史に幕を下ろしました。本コレクションは創刊号から最終号まで収録し、オリジナルの冊子のイメージで閲覧できるだけでなく、OCR処理をかけているため、全文検索が可能です。
(マイクロ版タイトル:SUR, 1931-1992 (Online product from Scholarly Resources))
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