The Papers of Amiri Baraka, Poet Laureate of the Black Power Movement
本コレクションは、詩人、作家、音楽評論家として1960年代の急進的黒人芸術運動を牽引し、政治活動家としては、公民権運動から派生し、完全な人種の平等を追求した急進的運動、ブラック・パワー運動を指導したアミリ・バラカ(前名リロイ・ジョーンズ, 1934-2014)の文書を提供します。
これらの文書は、アミリ・バラカ研究の第一人者で、A Nation within a Nation: Amiri Baraka (LeRoi Jones) and Black Power Politics の著者としても知られるコモジ・ウッダード(Komozi Woodard)により蒐集されたものです。コモジ・ウッダードはニュージャージー州ニューアークでの活動家時代にこれらの文書を蒐集しました。全体は17シリーズで構成され、詩や戯曲の創作、演説、組織の記録、印刷物、書簡、オーラルヒストリーを収録します。
《コレクションの構成》
シリーズ I:黒人芸術運動 1961年-1998
ハーレムを拠点とする黒人芸術運動の指導者としてバラカが活躍した時代の資料。雑誌やパンフレットの形で出版された詩、戯曲、批評等を収録。著者はバラカの他、ラリー・ニール(Larry Neal)、マウラナ・カレンガ(Maulana Ron Karenga)、エド・ブリンズ(Ed Bullins)、ソニア・サンチェス(Sonia Sanchez)、マーヴィX(Marvin X)、ハーバート・ストークス(Herbert Stokes)、ニッキ・ジョバンニ(Nikki Giovanni)、ミー・ジャクソン(Mae Jackson)、シルヴィア・ジョーンズ(Sylvia Jones)、ジュエル・ラティモア(Jewel C. Latimore)、ドン・リー(Don L. Lee)等。文芸作家としてのバラカの生涯と黒人解放運動における文化の重要性を論じるバラカの盟友ラリー・ニールの批評は、収録された作品群の背景を理解するのに役立つ。シリーズ II:黒人民族主義 1964年-1977年
黒人民族主義に関するバラカの重要な理論的著述を収録。マウラナ・カレンガがバラカに重要な影響を及ぼしたことを明らかにする。批評「黒人の価値体系(A Black Value System)」はカレンガの7つの指導原則を解説する。7つの原則を定義するカレンガ自身の批評「我らの7つの原則:マウラナ・カレンガと黒人の価値体系の必要」と「キタブ:カワイダの始まりの概念」も収録。シリーズ全体は黒人民族主義の様々な側面を取り上げて論じるムハンマド・アフマド(Muhammad Ahmad)のパンフレットで締めくくられる。シリーズ III:書簡 1967年-1973年
バラカのプライベートな書簡を収録。バラカがカレンガやケネス・ギブソン(Kenneth A. Gibson)らに宛てた書簡、ポール・ロマニ、ウォルター・ロドニー、ムファナカセヤナ・グゴウボウズ(Mfanasekaya P. Gqobose)等がバラカに宛てた書簡を収録。これらの書簡からバラカの文化ナショナリズムへの関心やアフリカ人とアフリカ系アメリカ人の連携へのバラカの模索が明らかにされる。シリーズ IV: ニュージャージー州ニューアーク 1913年-1980年
ホームタウン、ニューアークでのバラカの活動を記録する。ニューアークでは、住宅や学校や雇用の問題に取り組むため、地域を拠点とする数々のプロジェクトを実施した。中でも、黒人の低所得者向け住宅を建設しようとするカワイダ・タワーズ(Kawaida Towers)プロジェクトやニューアークの都市再生を試みる NJR-32 プロジェクトは有名。ケネス・ギブスンがニューアーク市初の黒人市長に選出された1970年の選挙や1974年の暴動に関する新聞記事の切抜きを含む。シリーズ V: アフリカ人会議 1960年-1970年
バラカは1970年、アフリカ人の文化ナショナリズムという自身の構想を実現するためにアフリカ人会議(Congress of African People)を創設した。この構想は、ジュリウス・ニエレレ(Julius Nyerere)、アミルカル・カブラル(Amilcar Cabral)、アフメド・セク・トゥーレ(Ahmed Sékou Touré)等のアフリカの指導者やカレンガ等のアフリカ系アメリカ人の文化ナショナリストの影響を受けたものである。収録されている文書やパンフレットの多くはバラカの手になるもので、政策に関わるものから、大会や会議での声明、哲学的・思想的著述まで、広範囲におよぶ。黒人に対する警察の暴力への抗議、ボストンの学校における人種統合の行き詰まり、第6回汎アフリカ会議、自由のための黒人の闘いにおける女性の役割等、多様な問題が取り上げられる。アフリカ人会議の機関紙である『統一と闘争(Unity and Struggle)』の号も収録される。バラカがアフリカ人会議をマルクス主義の団体に変えようと試み、団体内に対立が生じた結果、アフリカ人会議は解散した。シリーズ VI: 全国黒人会議(National Black Conferences)と全国黒人議会(National Black Assembly)1968年-1975年
バラカは生涯を通して地域を拠点にした政治活動を重視したが、全米規模の政治活動を無視したわけではない。このシリーズは、全米規模でのバラカの政治活動を記録する文書を収録する。1966年に始まった全国黒人会議運動(National Black Conference Movement)にバラカは1967年にニューアークで開催された会議から関わるようになった。1972年にバラカは、インディアナ州ゲリー市市長のリチャード・ハッチャー、ミシガン州議員チャールズ・ディッグス・ジュニアとともに、ゲリー市で開催される黒人会議を招集した。この会議は60年代から70年代にかけての黒人解放運動の一つのハイライトとなった。会議では政治宣言(いわゆるゲリー宣言)を採択し、黒人政党の結党に向けて大きく前進することになった。ゲリー宣言は、経済、人間開発、コミュニケーション、人間開発、環境保護、政治参加、国際政策の7領域をカバーした。この会議では全国黒人議会も創設された。このシリーズは、ゲリー宣言のテキスト、全国黒人議会に関するバラカの著述の他、全国黒人議会を分裂させることになるイデオロギー対立を記録する文書も収録する。シリーズ VII: 黒人女性の統一戦線(Black Women’s United Front)1975年-1976年
黒人女性の政治参加を推進することを目的として、1974年、黒人女性統一戦線がバラカの妻であるアミナ・バラカ(シルヴィア・ジョーンズ)によって設立された。本シリーズは黒人女性統一戦線に関する『統一と闘争』紙の記事の切抜き、黒人解放闘争における女性の役割や黒人女性統一戦線に関するバラカの論文の他、アミナの論文も収録する。シリーズ VIII: 黒人統一のための学生団体(Student Organization for Black Unity)1971年
黒人統一のための学生団体(SOBU)は1969年、ノースカロライナ州グリーンズボロで創設された。本シリーズは、SOBUの歴史、プログラム、幹部のリスト、ニュースレター、公式機関紙『ザ・アフリカン・ワールド(The African World)』の幾つかの号を収録する。シリーズ IX: アフリカ解放支援委員会(African Liberation Support Committee)1973年-1976年
オウス・サドウカイ(前名ハワード・フラー)は1971年アフリカを訪問し、モザンビーク、ギニアビサウ、アンゴラで反植民地運動を目にした。アメリカに帰国後、アフリカ解放闘争を支援する活動を開始し、アフリカ解放支援委員会を創設した。本シリーズは委員会に関する各種文書、具体的には委員会の原則に関する声明、タンザニアの社会主義に関するウォルター・ロドニーの論文、アフリカ解放月間に関する便覧等を収録する。シリーズ X: 革命的共産主義連盟(Revolutionary Communist League)1974年-1982年
マルクス主義者と黒人民族主義者の内部対立によりアフリカ人会議が解散した後、バラカは革命的共産主義連盟を創設した。本シリーズは、民族主義からマルクス主義への転向の軌跡を明らかにするバラカの著述を収録する。中国共産主義、国際共産主義運動、革命的共産主義連盟のイデオロギー的ポジション、黒人解放運動の歴史、工場でのオルグ活動、プエルト・リコの革命的労働者組織等の主題が取り上げられ、雑誌『ボリシェビキ』『階級闘争(Class Struggle)』『ザ・レッド・バナー』から各々1号ずつを収録する。シリーズ XI: アフリカ社会主義(African Socialism)1973年
バラカの思想遍歴に重大な影響を及ぼした二人のアフリカ人社会主義者、ジュリウス・ニエレレとアフメド・セク・トゥーレの文書を収録する。東アフリカ独立運動の指導者ニエレレの論文は、ウジャマー(「家族的連帯」を意味するスワヒリ語)社会主義を論じる。また、ギニア民主党の指導者で独立後の初代大統領セク・トゥーレの論文「革命と生産」「アフリカと帝国主義」「革命における女性の役割」を収録する。シリーズ XII: 黒人マルクス主義者 1969年-1980年
バラカの同時代人の黒人マルクス主義者や一つ前の世代の黒人マルクス主義者(ハリー・ヘイウッド、C・L・R・ジェイムズ、オディス・ハイド等)による著述や彼らに関する文書を収録する。中でも、ハリー・ヘイウッドの著述が大きなウェートを占める。長く共産党員だったヘイウッドは、合衆国における黒人の民族自決を重視したが、これが共産党の方針と対立し、1959年除名される。しかし、ヘイウッドはその後も、バラカ等の急進的黒人知識人に多大の影響を与え続ける。本シリーズには、「黒人問題に関する革命的立場のために」、「民族問題に関する若干の所見」、「黒人の力と社会主義のための闘い」、「合衆国における黒人問題に関するレーニン主義的立場のための闘い」等のヘイウッドの著述が収録されるが、最も重要なものは、ヘイウッドの弟子のオディス・ハイド(Odis Hyde)による自伝の口述筆記で、20世紀の黒人解放運動の個人史が感動的な筆致で記録されている。シリーズ XIII: 全国黒人統一戦線(National Black United Front)1979年-1981年
1980年に創設された全国黒人統一戦線(NBUF)の創設時の文書、具体的には団体規約、内規、規約修正、設立会議プログラム、第一回大会決議等を収録する。第一回決議では、社会福祉、労働、国際問題、政治、監獄、若者、芸術文化、健康、地域社会、教育、雇用、警察、女性、住宅等、幅広い問題が扱われた。その他、NBUFの会長ハーバート・ドートリー(Herbert Daughtry)による詳細な活動報告も収録される。シリーズ XIV: 雑録 1978年-1888年
バラカの4論文「アメリカ黒人文学と階級闘争」、「民族主義、民族自決、社会主義革命」、「ゲッツが釈放されれば、黒人は武装しなければならない」、「ジェシー88」の他、黒人労働組合連合、黒人労働者と組織的労働運動の関係についての資料を収録する。シリーズ XV: 逐次刊行物 1968年-1984年
The African World, The Black Nation, Black NewArk, Unity and Struggle, Main Trend, IFCO Newsを収録。The African WorldはSOBUにより発行された新聞で、汎アフリカ主義の論陣を張った。The Black Nationはバラカ自身が編集した新聞で、マルクス主義や労働者階級の統一に関するバラカの関心、黒人解放闘争における芸術文化の重要性に対するバラカの信念が編集方針に表れている。バラカ自身の論文、詩、戯曲の他、芸術家や活動家へのインタビュー記事も収録。Black NewArkはニューアークの地域紙で、1968年は1号、1972年から1974年までは全号を収録する。バラカは”Raise”というコラムに寄稿した。Unity and Struggleはアフリカ人会議の公式機関紙で、Black NewArkの全国版。Main Trendは反帝国主義文化連合が1978年に創刊した刊行物で、大衆文化における階級闘争に焦点を当てる記事を掲載した。IFCO Newsはコミュニティ組織のための宗教間財団(Interreligious Foundation for Community Organization)の発行物。シリーズ XVI: オーラルヒストリー 1984年-1986年
アミリ・バラカ文書を蒐集したコモジ・ウッダードとウッダードのアシスタントによって行われた16人へのインタビューのトランスクリプトを収録。インタビューは、「黒人ニューアークの形成:ニューアークの政治に対する解放運動の影響に関するオーラルヒストリー(The Making of Black NewArk: An Oral History of the Impact of the Freedom Movement on Newark Politics)」というオーラルヒストリープロジェクトの一環として行われた。インタビューの大半はニューアークの活動家である。16人はバラカ、カレンガ、ジョン・ヘンリク・クラーク(John Henrik Clarke)、ウィルノラ・ホルマン(Wilnora Holman)、ロナルド・タッカー(Donald Tucker)、ホニー・ウォード(Honey Ward)、ヴィッキ・ガーヴィン(Vicki Garvin)、サイディ・ヌグヴ(Saidi Nguvu)、ユージン・キャンベル(Eugene Campbell)、リチャード・ウェズリー(Richard Wesley)、ビル・レイノルズ(Bill Reynolds)、サリム(ネットル・ロジャース)(Salimu (Nettle Rogers))、ターラム(ティム・ホリデイ)(Taalamu (Tim Holliday))、ポール・サンダース・ナカワ(Paul Sanders Nakawa)、ババ・ムシャウリ(ラッセル・ビンガム)(Baba Mshauri (Russell Bingham))、ラリー・ハム(アドヒム・チュンガ)(Larry Hamm (Adhimu Chunga))。シリーズ XVII: コモジ・ウッダードのオフィス・ファイル 1956年-1986年
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