Black Nationalism and the Revolutionary Action Movement: The Papers of Muhammad Ahmad (Max Stanford)
本コレクションは、急進的ブラック・ナショナリスト団体、革命行動運動(RAM)の創設メンバーの一人、ムハンマド・アフマド(マックス・スタンフォード)の文書を収録するものです。
革命行動運動(Revolutionary Action Movement, RAM)は、オハイオ州のセントラル州立大学(Central State College)で1962年に設立された学生団体を起源とし、急進的な黒人学生と統合しながら規模を拡大し、1964年頃までにはフィラデルフィアを拠点とする地域組織から全国組織へと脱皮しました。
RAMが実践した運動は、黒人の有権者登録、企業に黒人の雇用を要求し、拒否した企業に対して不買運動を展開した牧師たちへの支援活動、黒人の歴史に関する講義の実施、黒人に対する警察の暴力的行為を根絶する取り組みなど、広範囲に及びました。
RAMは黒人の民族自決の権利を制度化することを目標に掲げ、そのためにアメリカ合衆国に社会主義を確立する必要性を説きました。みずからを民族的・国際的な革命組織と規定し、組織の目標を達成する手段として直接的行動に訴え、暴力による人種差別からの自衛手段として武装する権利を掲げました。RAMの組織は集団指導体制を取り、中央委員会が全体を統括し、『Black America』という隔月刊誌と『RAM speaks』という週刊ニューズレターを通して、1960年代に自然発生的に生じた都市反乱の参加者の政治意識の覚醒に努めました。
本コレクションの所蔵主である、RAMの創設メンバーの一人、マックス・スタンフォード(のちのムハンマド・アフマド)は、両親や親戚など、周囲に全米黒人地位向上協会(NAACP)やネイション・オブ・イスラムのメンバーが多い環境で育ちました。オハイオ州のセントラル州立大学在学中に、黒人学生団体の指導者ドナルド・フリーマンの薫陶を受け、RAMの創設に参加、大学を退学し、その活動に専念します。
雑誌を拠点にした当初の理論活動から次第に実践に軸足を移し、活動の拠点をフィラデルフィアから全国へ広げました。また、マルコムX、クイーン・マザー・ムーア、ジェイムズ・リー・ボグス、グレース・リー・ボグス等、著名な黒人指導者の知遇を得、これらの人々と交流する中で、自らの理論と戦略を鍛え上げました。
その後、ブラックパンサー党への接近、デトロイトの急進的黒人労働団体への支援等の政治活動により頭角を現し、RAMの指導的立場に立ち、FBI長官J・エドガー・フーヴァーから「米国で最も危険な男」と呼ばれたスタンフォードは、FBIの監視下に置かれ、1966年に他のRAM幹部とともに逮捕されました。すぐ釈放されたものの翌年再度逮捕されたスタンフォードは、以後、地下に潜伏します。イスラム教への信仰に基づき、アクバル・ムハンマド・アフマド(Akbar Muhammad Ahmad)と「名乗るようになったのはこの頃です。
本コレクションは、RAMとRAMの影響を受けた団体、深いかかわりを持った人物の文書を収録します。RAMの影響を受けた団体としては、アフリカ人民党(African People’s Party)、ブラックパンサー党、革命的黒人労働者連盟(League of Revolutionary Black Workers)、黒人統一のための若者団体(Youth Organization for Black Unity)、アフリカ解放支援委員会(African Liberation Support Committee)、新アフリカ共和国(Republic of New Africa)等が挙げられます。
RAMと深い関わりを持ち、本コレクション収録文書に記録されている人物としては、ロバート・ウィリアムズ(Robert F. Williams)、マルコムX、アミリ・バラカ(Amiri Baraka)、ゴードン・ベーカー・ジュニア将軍(General Gordon Baker Jr.)、ユリ・コウチヤマ(Yuri Kochiyama)、ドナルド・フリーマン(Donald Freeman)、ジェームズ・リー・ボグス(James Lee Boggs)とその妻のグレース・リー・ボグス(Grace Lee Boggs)、ハーマン・ファーガスン(Herman Ferguson)、アスキア・ムハンマド・トゥーレ(Askia Muhammad Toure)等が挙げられます。
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