脱植民地化:旧英国植民地・英連邦における政治・独立運動
脱植民地化:旧英国植民地・英連邦における政治・独立運動
Decolonization: Politics and Independence in Former Colonial and Commonwealth Territories
本アーカイブは、20世紀後半の英国植民地の独立運動・労働運動・政治運動に関する史料群を提供します。その際、被植民地側の視点に立った歴史認識に寄与すべく、各運動を推進した被植民地側の指導者、政治団体、政党が残した記録を収録することに努めました。収録資料はロンドン大学コモンウェルス研究所、ロンドン・メトロポリタン大学労働組合会議図書館、オックスフォード大学ナフィールド・カレッジという英国の3つの学術機関の所蔵資料で、いずれも英国の旧植民地の資料蒐集に尽力した機関や個人のコレクションです。
世界各地を植民地支配した欧米諸国では第二次大戦後、人文学研究が西洋中心主義を植民地支配と共犯関係にあった知の枠組として批判の俎上に載せてきました。この動きは近年では高等教育にも及び、教育カリキュラム自体に潜む西洋中心主義を克服する試みが進められています。研究・教育を支える史資料に目を転じると、図書館や文書館は所蔵資料の地域別バランスを見直す必要を早い時期から自覚し、「蔵書資料の脱植民地化」の掛け声の下、アジア・アフリカを中心とする旧植民地の史資料の蒐集に乗り出し、蔵書資料における西洋中心主義を克服しようと試みています。「脱植民地化」は植民地の政治的独立という20世紀に実現した歴史的事実だけでなく、旧宗主国の制度や歴史認識に潜む植民地制度の負の遺産を克服する現在進行形の試みとして、今もアクチュアルな課題を突き付けています。
《詳細カタログができました!》
こちらよりダウンロードいただけます。
《本アーカイブについてのウェビナー録画を見る》
(約37分、字幕・チャプターあり、スライドはこちら)
《収録コレクション》
- ロンドン大学コモンウェルス研究所所蔵政治パンフレット集成
ロンドン大学コモンウェルス研究所(Institute of Commonwealth Studies)は英国旧植民地関係資料の中では特に政治関係の資料が充実しています。同研究所は、アフリカ関係の資料蒐集を推進するイギリスの図書館・文書館連携機関、アフリカ関係図書館・文書館連合(SCOLMA)の加盟館でもあり、連合の中での役割分担として労働組合や政治関係の資料を集中的に蒐集してきました。本アーカイブではアフリカのみならず、アジア、カリブ海地域、オセアニア、中東を含む60ヵ国以上の旧英国植民地の政治団体、政党、労働組合が残したパンフレット、マニフェスト、ニュースレター、通信文、ポスター等を収録します。これらの資料は短命印刷物で長期的保存を想定したものではなかったため、入手が困難なものばかりです。全体で20万ページに及び、本アーカイブを構成する最大のコレクションです。資料の大半は多くの植民地が独立を実現した1960年代から70年代にかけてのもので、地域的にはアフリカ、オセアニア、アジア、カナダ、カリブ海、ラテンアメリカを網羅しています。
- ロンドン・メトロポリタン大学労働組合会議図書館所蔵マージョリー・ニコルソン文書
マージョリー・ニコルソン(Marjorie Nicholson)は労働党と近い関係にあった社会主義者で、フェビアン協会植民地局や労働組合会議に勤務した経歴を持ちます。労働組合会議(Trades Union Congress, TUC)は19世紀後半に創設された労働組合の全国組織ですが、植民地との関係も深く、植民地の労働組合活動家への金銭的支援や労働組合の組織・運営法の伝授といった形で、植民地の労働者や労働組合の支援活動にも携わっていました。ニコルソン自身も植民地の労働組合運動に関する知見を深め、インドのジャワハルラル・ネルー、トリニダード・トバゴのエリック・ウィリアムズ、シエラレオネのシアカ・スティーヴンス、ケニアのトム・ムボヤ、シンガポールのリー・クアンユー、ガーナのクワメ・エンクルマら、後に独立運動の指導者になる人々と交友関係を結びました。収録資料はニコルソンが引退後に蒐集に尽力した資料で、労働組合会議の組織、イギリスとコモンウェルス諸国における協同組合運動、労働組合会議の国際会議の議事録と文書、国際労働機関(ILO)、植民地の福祉と開発、強制労働、労働組合運動と汎アフリカ主義に関する資料が含まれています。地域別に見ると、アフリカではガーナ、ナイジェリア、タンザニア、ケニア、ウガンダ、南アフリカ、ローデシア(ジンバブエ)に関する資料、カリブ海地域ではジャマイカ、バルバドス、トリニダード、ガイアナに関する資料が多数収録されています。
- オックスフォード大学ナフィールド・カレッジ所蔵アフリカ労働組合文書集成
アフリカの労働組合運動に関する文書、パンフレットを集めたものです。労働組合の会議録、規約、刊行物、新聞記事切抜き、マニフェスト、演説等を含みます。収録年代は1949年から1969年までの期間で、言語は英語とフランス語です。
さらに詳しく
関連分野
- アジア研究
- アフリカ研究
- 労働
- 植民地主義
- ラテン系・ラテンアメリカ研究
- 中東研究
- 政治学・外交研究
- 20世紀研究
- 大英帝国史
- 現代グローバリゼーション史
- 国際法
- 人権・移民法