The Making of Modern Law: American Civil Liberties Union Papers, Part II: Southern Regional Office
現代西洋法制史シリーズ:アメリカ自由人権協会(ACLU)文書集の第2部はACLU南部支局の文書を収録します。
人種差別の撤廃を目的とする公民権法が成立した1964年、公民権運動の震源地の一つであったジョージア州アトランタにアメリカ自由人権協会(ACLU)の南部支局(Southern Regional Office)が開設されました。南部支局は人種差別の撤廃を目的の一つとして掲げ、公民権法を武器に各種人種差別措置の違憲判決を勝ち取ります。本コレクションは、南部支局が関わった多くの裁判に関する文書のほか、書簡、議事録など南部支局の内部文書など、総計約65万ページの文書を収録します。
南部支局の初代支局長には人権派弁護士としてジョージア州の人種差別政策を相手に法廷闘争を展開していたチャールズ(チャック)・モーガンが就任しました。ACLUの歴史の中ではロジャー・ボールドウィンと並ぶカリスマ的人物であったモーガンの下、南部支局は人種差別撤廃の目的を具体化するために、『南部司法制度改革計画(Operation Southern Justice)』と『投票権改革プロジェクト(Voting Rights Project)』の二つのプロジェクトを推進しました。
『南部司法制度改革計画』ではとりわけ、陪審員の選定における人種差別を主要なターゲットとして掲げ、黒人や女性を陪審員から除外する制度的障壁を撤廃するために多くの訴訟を起こし、人口の人種構成や性別構成を反映した形で陪審員を選定することを実現しました。また、白人陪審員によって死刑宣告を受けた黒人死刑囚の支援にも当たりました。『リー対ワシントン裁判』では、監獄における人種差別の違憲性を最高裁において勝ち取りますが、これはブラウン判決において法的に実現した公教育機関における人種差別撤廃を監獄にまで拡大したものです。
『投票権プロジェクト』は黒人の有権者登録が白人の妨害を受ける状況の中で、公民権法で保証された黒人の投票権を実効力あるものとするために、投票権法制定を求める機運が高まる中で始められました。大規模なデモ(セルマ行進)がアラバマ州で行われるなど、投票権法制定を求める声が高まった結果、投票権法は連邦議会で可決されました。前年の『レイノルズ対シムズ裁判』において、一人一票の原則を示す最高裁判決を勝ち取っていたACLUは『投票権プロジェクト』において、読み書き能力や投票税の納付など、有権者登録を阻止する制度的慣行を違憲であると訴える一方で、黒人他のマイノリティに対する教育を通して有権者登録の促進に努めました。『投票権プロジェクト』は、南部のマイノリティ、西部やアラスカの先住民の投票の力を弱める幾多の制度的慣行の撤廃に向けて、現在も大きな影響力を及ぼしています。
徴兵忌避者への法的支援も南部支局は積極的に取り組みました。ジュリアン・ボンド(公民権活動家)、モハメド・アリ(ボクサー)、ハワード・レヴィ(皮膚科医)らが徴兵を拒否したとき、南部支局は徴兵拒否者側の代理人、法廷助言者として訴訟に関わりましたが、徴兵拒否を純粋な人権問題ではなく政治的な理由に基づく反戦運動とみなしたACLU本部との間で亀裂が生じました。
*ACLU本部の文書を収録する 第1部:アメリカ自由人権協会(ACLU)文書集 1912-1990年 もございます。合わせてご検討ください。
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(約41分、字幕・チャプターあり・スライドはこちらから)
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