The Making of the Modern World: Part II, 1851-1914
経済学史・経済史古典文献集成(MOMW) シリーズの第2部は、1851年から1914年に刊行された資料4,900冊以上を収録します。これは、もとの収集方針から1850年までの資料に限定されていた 第1部 を引き継ぐもので、第1部の収集者であったフォックスウェルと並び称せられる経済学者・収集家のエドウィン・セリグマン旧蔵書から成るコロンビア大学および広島経済大学の両セリグマン文庫、カンザス大学図書館所蔵経済学史コレクション、そしてフォックスウェルによる寄贈後に収集されたゴールドスミス文庫の蔵書から、第1部同様に社会・経済のすべての側面にせまる多様な資料群をデジタル化しました。
第2部のカバーする19世紀後半から20世紀初頭は、技術革新と工業化を推し進める西欧の軍事的・経済的優位が拡大し、市場拡大や資源獲得をめざしてアジア・アフリカに進出した列強により、東西・南北の世界がはげしく揺れ動いた時代でした。アジアにおいては、維新を契機とした日本の急速な近代化、清朝の衰退と列強による中国分割、インドの英領化、東南アジアをめぐる列強の争いなどにより、アジアが欧米を中心とする世界経済に否応なく組み込まれ、現代へと尾をひく様々な問題の火種がまかれました。また、鉄鋼・石油・鉄道・通信などの新産業においては巨大資本が台頭し、経済・金融の国際化により本位貨幣や外国為替などの問題が論議され、19世紀末には欧米において初めての世界的な大不況が起こった時代でもあります。この時期の社会科学文献を網羅するMOMW第2部は、現代へと連なるグローバル経済のルーツをさぐる上で不可欠な資料集成であるといえます。
《コロンビア大学・広島経済大学セリグマン文庫》
コロンビア大学で長く教鞭を取り、租税学や経済学史の分野で大きな業績を残した20 世紀前半のアメリカ経済学界の重鎮エドウィン・セリグマン(Edwin R. A. Seligman, 1861-1939)が収集した書籍やパンフレットのコレクションです。フォックスウェル(第1部 参照)とほぼ同時期に約50 年にわたり文献を収集したセリグマンのコレクションは世界的にも知られ、売却時にはハーバード大学、ソ連政府、日本政府など米国内外から購入の申し出がありましたが、セリグマンは自身が長く教鞭をとったコロンビア大学を売却先に選びました。また、セリグマン旧蔵コレクションの一部は、広島経済大学が所蔵しています。
《カンザス大学経済学史コレクション》
カンザス大学で長く教鞭を取った経済学者リチャード・ホーウィー(Richard S. Howey, 1902-1993)は経済学研究と教育のかたわら、カンザス大学図書館の経済学史関係資料の収集にも携わりました。ホーウィーが収集したコレクションは、特に1851年以降に刊行された文献が充実し、ハーバード大学クレス文庫の司書を長く務めたケネス・カーペンターは、このコレクションを「1851年以後のコレクションとしては他の追随を許さず、1850年以前の文献が充実しているクレス文庫と相互に補完しあう関係にある」と評しています。
《ロンドン大学ゴールドスミス文庫》
ケンブリッジ大学等で教鞭を取り、『エコノミック・ジャーナル』の創刊やイギリス経済学会の創設に関わり、学会の会長を歴任した20世紀前半のイギリス経済学界の重鎮ハーバート・フォックスウェルが生涯を捧げて収集した書籍やパンレフットのコレクションをベースとして形成されたものです。フォックスウェルが四半世紀をかけて収集したコレクションをゴールドスミス商会が買い取り、ロンドン大学に寄贈したため、「ゴールドスミス文庫」と呼ばれています。20世紀を代表する経済学者で、自身も稀覯書に対する造詣が深かったケインズはフォックスウェル追悼記事の中で、ゴールドスミス文庫をフォックスウェル畢生のライフワークの賜物として、惜しみなく讃えています。
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