The Quest for Labor Equality in Household Work: National Domestic Workers Union, 1965-1979
アメリカでは富裕層の家庭において多くはアフリカ系アメリカ人の女性が家事労働に従事してきましたが、これらの家事労働者は企業に雇用される労働者と異なり、労働組合を組織する機会も奪われ、法的保護を受けにくい立場に置かれていました。しかし、1960年代に公民権運動が盛り上がりを見せると、家事労働者も自らの権利を主張すべく、立ち上がります。
ジョージア州アトランタで、白人富裕層の家庭にバスで通い、家事労働で生計を立てていたドロシー・リー・ボルデン(Dorothy Lee Bolden)は、毎日利用するバスの中で、同じように家事労働に従事する女性たちに組合を立ち上げることを持ち掛け、家事労働に従事する女性を支援する組織として、全米家事労働者組合(National Domestic Workers Union, NDWU)を1968年に創設しました。
NDWUは組合員が家事労働を行なう上で必要とされるスキルを伸ばせるよう、組合員向けのトレーニングの実践、休暇取得や賃金面で雇い主と交渉する際の交渉術や家事労働に関わる政府の社会保障制度を習得するためのパンフレットや参考図書の提供、また、組合員の仕事や生活全般の相談を受けるなど、広く家事労働者の生活全般を支援しました。
これらの支援活動を行なう財政的基盤としては、連邦政府の助成金を利用しました。労働条件の改善だけでなく、家事労働者が自分の仕事に誇りを持てるよう、アトランタ市に働きかけ、”Maid's Day” を定め、雇用主が選んだ優秀な使用者を表彰するなど、家事労働者の尊厳を守ることにも配慮しました。
NDWUの他にも、アメリカでは家事労働者組合が設立されましたが、NDWUは全米最大級の家事労働者組合として、アトランタ市の家事労働者の支援活動で大きな足跡を残しました。ボルデンは1994年にNDWUを解散し、その後は個人の立場で家事労働者の支援活動を続けました。
本コレクションは、書簡、法務文書、会議録等、NDWUの内部文書と印刷物を提供するものです。書簡はボルデンが公民権活動家のジュリアン・ボンド、サム・ナン上院議員、ハーマン・タルマージ上院議員、アレン・ウィリアムズ、アンドリュー・ヤングら、ジョージア州選出の政治家らと交わしたものです。収録文書は、NDWUの黒人社会への関与、組合員のスキル向上のための職業学習訓練センター(Career Learning Training Center)の活動、職業訓練プログラム(Manpower Program)、アトンタ大都市圏高速交通局(Metropolitan Atlanta Rapid Transit Authority, MARTA)、連邦政府の衛生教育福祉省等、様々なトピックにおよびます。会議録はNDWUの会議録のほか、市民による交通諮問委員会、近隣市民諮問会議、衛生教育福祉省傘下の女性の権利と責任に関する諮問委員会、アトランタ大都市圏高速交通局等、ホルデンが委員として参加した諸々の会議の議事録も収録します。
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