Mail on Sunday Historical Archive, 1982-2011
本アーカイブは『デイリー・メール』の姉妹紙でありながら独自の編集方針や視点を持つことで知られる英国の日曜紙『メール・オン・サンデー』の創刊(1982年)から2011年までの記事を収録するものです。電子化に際してはマイクロフィルムをスキャニングし、全文検索に対応しています。
1980年代のはじめ、英国日曜紙の市場では高級紙『サンデー・タイムズ』『サンデー・テレグラフ』、大衆紙『ニュース・オブ・ザ・ワールド』『サンデー・ミラー』等がそれぞれ読者のニーズを満たす一方で、『サンデー・エクスプレス』が保守的な労働者や女性を中心とする新たな読者層に向けて、硬軟織り交ぜた記事を提供することで高級紙や大衆紙との差別化を図っていました。高級紙でも大衆紙でもない第三の新聞として、高級紙と大衆紙の狭間に新たな市場を見出し、1970年代以降多くの読者の獲得に成功した『デイリー・メール』の社主、第3代ロザミア卿(Vere Harmsworth, 3rd Viscount Rothermere)が『デイリー・メール』の日曜版の創刊を思い立った時、ターゲットに据えたのはライバル紙『デイリー・エクスプレス』の日曜版『サンデー・エクスプレス』によって押さえられていた中間的市場の読者層でした。
当時の首相マーガレット・サッチャーは保守党党首になる以前から『デイリー・メール』が肩入れした政治家で、保守化する社会の波に乗り、首相にまで上り詰めました。『メール・オン・サンデー』創刊の2ヵ月前にはアルゼンチンとの間でフォークランド紛争が勃発、愛国的な世論が高まる中、妥協を拒み強硬策を取るサッチャー首相は高い支持を獲得していました。
追い風が吹く中で創刊され、成功が約束されたかに見えた『メール・オン・サンデー』ですが、期待は裏切られ、創刊直後は低迷します。社主ロザミア卿は即座に編集長を解任、「ミドル・イングランド」のスローガンを旗印に『デイリー・メール』復活を成し遂げた名編集長デヴィッド・イングリッシュ(David English)に立て直しを委ねます。イングリッシュが短期間で再生への道筋をつけた後、スチュワート・スティーヴン(Stewart Steven)が編集長に就任します。スティーヴンは期待に応え、ライバル紙が軒並み苦境に陥るのを尻目に日曜紙の市場で独り勝ちし、発行部数で『サンデー・エクスプレス』を超えるという創刊当初の目的を達成しました。
小社は英国の日曜紙では、高級紙の『サンデー・タイムズ』(1822-2021)、『サンデー・テレグラフ』(1961-2016)、『ザ・インディペンデント・オン・サンデー』(1986-2016)、大衆紙の『サンデー・ミラー』(1916-2000)をアーカイブで提供しています。これに『メール・オン・サンデー』が加わることで、高級紙、大衆紙、中間紙という英国の主要新聞類型のアーカイブが出揃うのみならず、これらの新聞を Gale Primary Sources プラットフォームで横断検索することで、様々な発見の機会を提供します。『メール・オン・サンデー』は1980年代のサッチャー革命以後の英国の政治と社会の動向を検討する上で恰好の資料です。
※月~土発行の姉妹紙『デイリー・メール』歴史アーカイブも合わせてご検討ください。
※『メール・オン・サンデー』と姉妹紙『デイリー・メール』それぞれの特色をご紹介します。(約43分・字幕・チャプターあり、スライドはこちら)
《主な寄稿者》
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ピアーズ・モーガン(Piers Morgan, 1965- )
英国のジャーナリスト、キャスター、テレビ・パーソナリティ。2008年から『メール・オン・サンデー』に寄稿。DailyMail.Com の米国版編集長でもある。数多くの著書があるほか、トーク番組「Piers Morgan Uncensored」のホストも務める。 -
ノーマン・テビット(Norman Tebbit, 1931- )
英国の政治家、保守党員。エッピング (1970-1974) およびチングフォード (1974-1992) 選出の下院議員、1981年から1987年までサッチャー首相時代に閣僚を務める。1987年に内閣を去った後、1992年から2022年初めまで上院議員。 -
ピーター・ヒッチンズ(Peter Hitchens, 1951- )
ジャーナリスト・作家であり、元モスクワおよびワシントン特派員で、2000年以降『メール・オン・サンデー』に寄稿。2010年には政治ジャーナリズム部門でオーウェル賞を受賞。 -
ジョン・ジュナー(John Junor, 1919-1997)
スコットランド出身のジャーナリストで、ライバル紙『サンデー・エクスプレス』の編集長を辞した後、1990年から1997年にかけて『メール・オン・サンデー』に寄稿。若い頃には自由党からスコットランド議会に立候補したこともある。 -
ジュリー・バーチル(Julie Burchill, 1959- )
弱冠17歳でジャーナリストとしてデビュー、複数の新聞に寄稿後、1998年まで『メール・オン・サンデー』のコラムニストを務める。はじめはサッチャーに好意的だったものの、1987年の総選挙では労働党への指示を呼びかけた。小説も複数執筆している。
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