Illustrated London News Historical Archive 1842-2003
図版でニュースを伝えるという全く新しい発想の下、人々に同時代の出来事に関する鮮烈なイメージを植えつけ大成功したイギリスの週刊紙『イラストレイテッド・ロンドン・ニュース』の1843年の創刊から2003年の終刊までをデジタル化するデータベース。
全号をフルカラーでデジタル化し、フルテキストのほか、挿絵のキャプションによる検索も可能にしています。また号外・特別号も可能な限り収録しています。
紙面をにぎわせた数々の挿絵は見た目に楽しいばかりでなく、当時の図像や風俗を伝える貴重な資料であり、原本の多くはコレクターズアイテムとして今も古書市場で取引されています。日本でも『絵入りロンドン新聞』として古くから知られ、特に幕末明治期を描いた挿絵の数々は有名です。
『イラストレイテッド・ロンドン・ニュース』は通常の号以外に、万国博覧会のような国際的なイベント、国内外の王室の式典、国民的英雄や桂冠詩人の逝去の際に臨時増刊号を刊行し、総力取材によって主題を多角的に掘り下げています。年末恒例のクリスマス特集号を含め、これらの特集号の数は、19 紀だけでも400号以上に及びます。
『Lloyd's Illustrated London News』、『Pictorial Times』『Pictorial World』など、後発の絵入り新聞・雑誌が長続きしなかったのに対して、絵入り新聞の代名詞として写真・テレビの時代も生き抜けた『ILN』は2003年に161年の歴史に幕を下ろすまで人々に愛され続けました。
《関連エッセイ》
「『イラストレイテッド・ロンドン・ニュース』小史」パトリック・リアリー(日本語訳)
《関連インタビュー》
東洋大学 岩瀬由佳先生インタビュー〈読解を促すメタファーに満ちた挿絵が豊富にあるのが『イラストレイテッド・ロンドン・ニュース』の大きな魅力です〉
東京大学 勝田俊輔先生インタビュー〈イラストレイテッド・ロンドン・ニュースのアイルランドに対する眼差しは温かい〉
《ウェビナー録画*を見る》
※ 『イラストレイテッド・ロンドン・ニュース』歴史アーカイブの他に、英諷刺誌『パンチ』歴史アーカイブ 、19世紀英国雑誌コレクションの3商品を紹介するウェビナーです。(約27分、字幕・チャプターあり、スライドはこちら)
絵入り新聞の代名詞
19世紀半ば、イギリスでは政治、経済、社会、文化、科学技術など各方面で変革が起こり、若い女王の下、人々は新しい時代の胎動を感じていました。メディアの分野でも、時代は新しい表現媒体を求めていました。折しも、トマス・ビューイックにより再興された木工木版画が洗練の度を深め、新たな表現力を生み出すことに成功、人々のニーズを形にする技術的な受け皿が成立していました。洗練された木工木版画を多数掲載する形で創刊されたのがイラストレイテッド・ロンドン・ニュース(ILN)です。
国家的イベントのクロニクル
イギリス内外の出来事に目配りを効かせていたILNがとりわけ多くのページを割いて報道したのが、万国博覧会、鉄道の開通、議事堂や駅舎等の落成、国王や皇太子の外遊、外国の国家元首の戴冠式や国葬などの国家的イベントであり、一号まるごと当該イベントに費やすことも珍しくありません。ILNは、近現代イギリス史における国家的イベントのクロニクルです。
建築物図版の宝庫
19世紀イギリスでは、ゴシック建築が流行する一方で、世紀初頭のギリシア趣味に影響を受けた新古典主義も隆盛、その他に、ルネサンス様式、バロック様式など、様々な様式の建築が、芸術・文化施設、カントリーハウス、行政庁舎、教会、商業施設、ホテル等で、競うように建設されました。ジョン・ラスキンの『建築の七灯』に代表される建築批評が盛んになったヴィクトリア朝時代にあって、ILNは建築ジャーナリズムの一翼を担っていました。
大英帝国の図版メディア
ILNの図版製作は、国内外に派遣され、現地で大量のスケッチを描く特派員としての画家と、彼らから送られてくるスケッチを図版に仕上げるロンドンの工房スタッフの分業体制の下で運営されていました。
中でも、海外の戦場に送られる従軍画家は “Special Artist” として紙面でも特別に遇されました。ILN特派員ウィリアム・シンプソン、ロバート・トマス・ランデルス、ジョゼフ・アーチャー・クロウ、エドワード・アンジェロ・グッドールによるクリミア戦争のスケッチは従軍画家の誕生を告げるものでした。クリミア戦争以後も戦争が起こるたびに特派員を派遣したILNには、戦地を描いた図版に加え、現地の日常生活の図版も多数掲載され、現代人にとっての極めて重要な視覚的情報源です。
タイムズが大英帝国の活字メディアとして同時代の世界の時論、公論に影響を与えたとすれば、ILNは大英帝国の図版メディアとして、現代人が過去の大英帝国をイメージする際に大きな力になっています。
文芸記事、時評、コラムも充実
ILNは短編小説、連載小説など文芸記事も充実しています。寄稿者には、G・K・チェスタトン、ウィルキー・コリンズ、コンラッド、コナン・ドイル、ハーディ、ヘンリー・ジェイムズ、キップリング、サマセット・モーム、ジョージ・メレディス、R・L・スティーヴンソン、アントニー・トロロープ、H・G・ウェルズなど有名作家の他、スティーヴン・クレイン、ホーソーン等のアメリカ人作家、女性作家もいます。
また、時評やコラムも見逃せません。特にILNの看板コラム「我々の覚書(Our Note Book)」は、その100年の歴史で担当したのはわずかに4人にすぎず、3代目のチェスタトンは31年間、4代目のアーサー・ブライアントは49年間に亘り執筆を続けました。その他、謎の美術批評家グループ “P.R.B.” がラファエル前派の意味であることを突き止めたことで有名なゴシップ・コラム「巷談・雑談(Town Talk and Table Talk)」、同じくゴシップ・コラムで、ジョージ・オーガスタス・サラらが、有名人のマナー、流行などの話題に鋭く切り込んだ「一週間のこだま(Echoes of the Week—Literary and Social)」、女性解放に生涯を捧げたフローレンス・フェンウィック・ミラーが32年間にわたって健筆を揮った女性向けの「淑女のためのコラム(The Ladies' Column)」が有名です。
特集号や補遺も収録
提供ILNは通常の号以外に、折に触れて特集号や補遺を刊行しました。特集号は、万国博覧会のような国際的なイベント、国内外の王室の式典、国民的英雄や桂冠詩人の逝去の際に臨時増刊号として刊行され、総力取材によって主題を多角的に掘り下げています。
年末恒例のクリスマス特集号を含め、これらの特集号の数は、19世紀だけでも400号以上に及びます。本データベースは、特集号や補遺を含めた形で、創刊号から終刊号まで完全に近い形で搭載されています。古書市場でもフルセットで出回ることが難しいILNをほぼ完全な形で閲覧できるのは、本データベースをおいて他にありません
お客様の声
「一次史料も使う歴史教育を進めるとき、ILN のような図版入りのデータベースは大きな意味を 持ちます。」
勝田 俊輔 先生(東京大学)
- 小社刊「In the Words of Users:Gale ユーザーインタビュー集」より, 2014
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プラットフォームの特色とツール
OCR(光学文字認識)
歴史的な印刷文献の全文検索を可能にするOCR(光学文字認識)技術を適用。フルテキスト検索、検索語のハイライト表示はもちろん、原本画像との並列表示やテキスト形式でのダウンロードも可能です。
用語の出現頻度
特定の語句が出現する検索結果の分布を、年代順の折れ線グラフにして表示する機能です。複数の語句の出現頻度を比較したり、語句が集中している年代を特定したりするのに便利です。
横断検索
Gale 一次資料データベース群の統合検索プラットフォーム Gale Primary Sources に対応。他の契約データベース群と横断検索することで、思いもよらない関連資料を発見することができます。
テキストマイニング
オンライン上で直感的にテキストマイニングを行なえる別売プラットフォーム Gale Digital Scholar Lab に対応。OCRテキストを使った統計分析・自然言語分析が可能となり、新たな発見の可能性を広げます。
ユーザーの声
ILN は、ヴィクトリア朝の定期刊行物としては一番有名ですし、ILN から入るというのが、誰かから言われた わけではありませんが、私にとってはやはり自然なことでした。
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